Image by mangataisho presspage
これはおそらくいま一番読むべきものを知れるクールな賞だが予め断っておく必要がある – 英訳版が発行されているかを保証するものではない。
マンガ大賞は、毎年、書店員他”マンガ好き”が集まって、「このマンガを誰かに勧めたい!」と言う熱意のもとに、なんの商業的介入もなくー言うなれば何の損得のないー純粋な日本のマンガオタクたちが「今年の一本」を推す賞である。そんなインディペンデントな始まりだということを忘れさせるほど、日本での知名度は高い賞だ。
過去の受賞作品も「ビースターズ」「ゴールデンカムイ」「海街Diary」など結果的にアニメ化、映画化が続々と持ち上がる話題作たちである。
マンガ読者ではない、アナタに一言申したいのは、現在のマンガは何も、「愛」とか「恋」とか「友情」とか「夢」とかばかりを描いていない。何も世界を守るためのバトルを繰り広げるだけではない。非常に仔細ながら、もしそのページを開かなければ、知らなかった感情に出会える、唯一無二の経験ができる。
グラフィックノベルだって、例えばニック・ドルナソ『サブリナ』、リチャード・マグワイア『Here』。それらはとんでもない驚きを読者に与えてくれた。その感動と同じである。
さて、今年のベストは– ありす、宇宙までも– 天才(と言わせてほしい!)売野機子の最新作で、’semilingual’という言葉を意識的に使って、それを差別的にあざ笑う人間たちを一蹴し、宇宙を目指す物語である。
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作者の売野機子はまだ39歳という俊英。今回の「マンガ大賞受賞を狙って描いた」と言う彼女の作品を手にとったのは「ルポルタージュ」が初めてだったが、とにかく台詞が鋭く、近未来的設定ながら親近感しか湧かない登場人物たちの感情に何度も震えたのだった。「ルポルタージュがやばい」と周りの友人たちに騒ぎ回っていたら、友人もどハマりしてくれ、私が渡英後に出版された単行本「インターネット・ラブ!」は、その友人が郵送で送ってくれたため、読むことが叶った。「ルポルタージュ」で’恋愛したがらない’人々を通して、恋愛する喜びを描いた売野先生は、「インターネット・ラブ!」でも好きな人がこちらを見て笑みを向けてくれるそんな純粋な喜びを描いていた。「ありす、宇宙までも」は恋愛の話ではないが、人間の感情の機微を丁寧に掬い取れる、そんな作家に思う。
いま英語版が出版されているとは思えないが、いつかぜひ手にとって欲しいと思う。