アイドルを基盤としたスターシステムを組み込むメディアミックス戦略は、日本映画産業において長年にわたり発展してきた重要な手法である。日本の実業家・映画プロデューサーである角川春樹は、映画・出版・音楽を一体化させた商業主導型の映画制作モデルを先駆的に打ち出した人物だ。彼は、俳優を単なる映画スターとしてではなく、複数のメディアを横断する「トランスメディア的商品」として設計するアイドル主導型のアプローチを採用した。こうして角川は、従来の物語中心の映画制作から、マーケティング重視の映画制作へと舵を切り、1970年代から80年代にかけて日本映画の制作・宣伝のあり方を大きく変革した。この戦略は現在も強い影響力を持ち、クロスメディア展開とアイドル・ブランディングは、現代のエンターテインメント産業の基盤となっている。
角川が登場したのは、日本の映画産業が危機に直面していた時代だった。1970年代、⼤映は倒産し、日活はロマンポルノ路線によって辛うじて生き残るなど、従来のスタジオシステムは崩壊しつつあった。こうした状況の中で、角川は新たな商業的ビジョンを提示する。映画は単体で公開されるのではなく、ベストセラー小説、ポップスの主題歌、雑誌、テレビ広告と同時に展開され、各メディアが互いを宣伝し合う仕組みが構築された。映画は、より大きな消費体験の中心的存在となったのである。
角川が特に重視したのは、スターの存在だった。彼にとってスターは、メディアを横断する最も強力な「接続点」だった。薬師丸ひろ子や原田知世といった角川アイドルは、単なる女優ではなく、精密にマネジメントされたトランスメディア的存在であった。彼女たちは主題歌を歌い、CMに出演し、写真集や雑誌に登場し、テレビと紙媒体を縦横無尽に行き来した。『ねらわれた学園』(1981)、『セーラー服と機関銃』(1981)、『時をかける少女』(1983)といった作品では、若いアイドルたちが現実社会の問題から距離を取ったファンタジー性の高い物語の中に配置され、楽観的で洗練された、国境を越えやすいイメージが提示された。ここには、後のフランチャイズ展開を先取りする発想がすでに見て取れる。
現在の日本のエンターテインメント産業は、ほぼ全面的にメディアミックスの論理によって動いている。『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』といったアニメ作品は、漫画からテレビアニメ、劇場映画、ゲーム、グッズ、さらにはテーマパークとのコラボレーションへとシームレスに展開される。キャラクターはアイドルのように機能し、安定的で認知度が高く、スキャンダルのリスクも低い商業資産となっている。さらに近年では、声優もテレビ、ラジオ、ライブイベントなどに出演するマルチプラットフォーム型のスターとなり、フィクションと現実の境界はますます曖昧になっている。
今日では、アイドルがドラマに主演し、主題歌を担当し、バラエティ番組で宣伝し、雑誌の表紙を飾り、コンサートを行うという流れはごく一般的だ。こうした活動はすべて、グループのブランド価値を強化するために連動している。『花より男子』(2005〜2008)の成功は、その典型例である。既に人気を獲得していた漫画を原作とし、嵐の松本潤を主演に迎えたこのドラマは、主題歌も大ヒットを記録した。シリーズはテレビドラマから映画へと拡張し、さらに海外リメイクへと広がり、スターと物語がいかに緊密に結びついていたかを示している。
近年の作品では、『グランメゾン・パリ』(2024)もまた、メディアミックスの進化を象徴している。元SMAPの木村拓哉が主演を務める本作は、テレビドラマから続く長期プロジェクトとして位置づけられ、ミシュランガイドとのコラボレーションなどを通じて、映画がライフスタイルやグローバル・ブランディングと結びつく形で展開された。
バーチャルアイドルから配信時代のフランチャイズ作品に至るまで、日本は映画を巨大なメディアシステムの一部として捉えるモデルを洗練させ続けている。映画を商品へと変え、アイドルをプラットフォームとして機能させた角川の革命的な発想は、数十年を経た今もなお、映像、音楽、スターが絶え間なく循環する世界の中で日本映画の制作、宣伝、消費のあり方を規定し続けているのである。