7月、細野晴臣が数年ぶりにロンドンでコンサートを開いた。デビュー55周年プロジェクト「HOSONO MANDALA」の一環のプロジェクトであり、久しぶりのロンドン公演ということもあって、チケットはプレミア状態。アメリカから飛んできたファンもいたらしく、会場は特別な熱気に包まれていた。東アジアの文化をフューチャーしたイベントの一つのプログラムでもあったため、会場のsouthbank centreはライブ前からちょっとしたお祭り状態であった。
11月には日本のジャズイベントで矢野顕子もバービカンセンター(ロンドン中心地にある映画館やシアター、図書館、住居が入った複合施設)でライブをしていて、日本の音楽レジェンドが連続してロンドンに来ていたのも面白い流れだ。
SouthBank Centre Photo by Author
前座には、細野の孫がベースを務めるバンドCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョコパコチョコキンキン)も登場した。彼らのファンでもある自分は、細野さんのライブが始まる前から有頂天であった。
SouthBank Centre Photo by Author
さらにこのライブの後、細野晴臣は東ロンドンHackneyにあるレコード店stranger than paradise recordsでDJセットを披露した。(なんと無料で!)店の外まで人があふれていて、彼を近くで見ようとDJエリアには人が押し寄せた。(もちろんレコードにサインをもらおうと列をなしてもいた)
Stranger Than Paradise Record Photo by Author
Stranger Than Paradise Record Photo by Author
細野さんがイギリスで人気な理由のもうひとつ有名な話として、イギリスのボーイズグループワイダイレクションとしてデビュー、活動休止後も個人名義で活動するハリー・スタイルズのアルバム「Harry’s House」が、細野の名盤『HOSONO HOUSE』へのオマージュとして名付けられた話がある。つまり細野の音楽は世代やジャンルを越えて、世界のアーティストに大きな影響を与えてきた。
では、なぜ今、日本のジャズやシティポップがロンドンでこんなに人気なのか?
① シティポップ再評価とYouTube経由の“発掘”
世界的に見ても、いまは第二次シティポップブームのど真ん中にある。
YouTubeが火付け役となり、“シティポップ”がグローバルに広まったことで、ロンドンの若い世代も自然と日本の70~80年代の音楽やジャズにたどり着いている。
細野の音楽はまさにその中心にあり、改めて聴き直す層が増えているのを感じる。
City POP Vinyl are featured at a vinyl shop in east London Photo by Author
② ロンドンの音楽文化が根強い
ロンドンは、ジャズ、クラブミュージック、アヴァンギャルド、ワールドミュージックがミックスされる街だ。
ジャンルをまたぐ音に寛容だからこそ、日本のジャズの繊細なメロディやコード感、丁寧なアンサンブルがすっと受け入れられている。
象徴的な場所を挙げると…
Cafe OTO
「音(oto)」が名前の由来。実験音楽や即興演奏、ジャズが集まる東ロンドンの拠点で、日本人アーティストの出演も多い。Mu
和食とジャズを組み合わせた空間。ジャズの演奏を聞きながら、フュージョン日本食を食べることができる。Jazz Cafe
毎年Nujabesのトリビュートライブを開催。
ライブハウスの多様性そのものが、日本の音楽を自然に受け止める土壌になっている。
Cafe oto Photo by Author
Nujabes tribute night at JAZZ cafe Photo by Author
③ 日本のジャズ/シティポップの“音質の良さ”がロンドンの耳に合う
英国の音楽ファンは昔から、
・丁寧な音作り
・洗練されたプロダクション
を評価する傾向が強い。
日本のジャズは
・正確な演奏
・繊細な音色
・情感のあるメロディ
・都会的な空気感(シティポップとの親和性)
といった要素が揃っていて、ロンドンの音好きの心に刺さりやすい。
東ロンドンにある、Idle Momentsは日本のレコードとワインを取り扱う異色のお店もある。
HOSONO House vinyl was sold at a vinyl shop in east london Photo by Author
日本のジャズとロンドンの未来
ロンドンはいま、若いジャズミュージシャンが世界に羽ばたく重要な街のひとつだ。
その流れの中に日本の音楽が混ざり、新しい表現が生まれつつある。
細野晴臣を入り口に、日本のアンビエントさらには若手のミュージシャンまで日本の音楽が親しまれている。
日本の音楽への興味はこれからもっと広がり、ロンドンのシーンの中に自然と溶け込んでいくはずだ。